自作小説【異世界令嬢は今日も婚約者を選んでる】
自作小説【異世界令嬢は今日も婚約者を選んでる】
「はい。次!」
私の部屋の外には男たちが長蛇の列を作っていた。
手に花束を持っている者もいれば、大きな包みを携えている者もいる。
なんでこうなってしまったのか・・・
あれは一か月前のこと・・・
***
「ジャスミン。そろそろお前も結婚を考えたらどうなんだ?」
私の父、ブロッケン公爵が言った。
確かに私も、もう二十・・・結婚してもおかしくない歳だ。
「でも、お父様。私なんかに結婚なんて・・・」
昔から私は臆病で引っ込み思案な性格だった。
そのせいもあって恋愛なんてことは、今まで一度たりとも経験したことが無かった。
ましてや結婚なんて・・・考えただけでもぞっとした。
「大丈夫。父さんが上手くやっておくから。」
「え?」
その言葉を聞いて安心はしたものの、父は変わり者で、昔は貴族の間で嫌われていたらしいと聞いたことがあったので、少し心配になる。
「お父様、一体何をするのですか?」
「なーに、特別なことは何もせんよ。ただお前と結婚してくれそうな男を探すだけだ。」
「それならいいけど・・・」
この時から嫌な予感はしていたのだ。
だが、結婚という言葉を突きつけられた小心者の私には、父を疑っている余裕などなかった。
その二週間後、父は国中に御触書を配った。
***
そして現在。
「ふぅ・・・これで半分は終わったな・・・ジャスミン、少し休憩するか?」
父は汗をかきながら、紙に印をつけていた。
だがぶっ続けで何人もの男たちと話をしていたので、顔からは疲れが滲み出ていた。
かくゆう私も父の隣で話を聞いているだけではあったが、さすがに疲れた。
正直、もう結婚なんていいから今すぐベッドに潜り込みたかった。
「そうですね、お父様。一旦休憩にしたいです。」
「よし・・・おい君、部屋の外で待っている人達にも休憩だと伝えてくれ。」
父が使用人に命じる。
「ふぅ・・・」
私は大きなため息をついて、思いっきり背伸びをした。
背筋がポキポキと鳴った。
「ジャスミン。良い人は見つかったか?」
父は頭をかきながら私に尋ねた。
「そうですね・・・えーと・・・」
記憶を探るが、特に印象に残っている人はいなかった。
皆、貴族と結婚をするために必死なので、同じような褒め言葉しか言わない。
「今のところはいませんね・・・」
「そうか・・・」
父は残念そうに言った。
「あの・・・お父様・・・」
「なんだ?」
「えーと・・・その・・・やっぱり、何でもないです。」
私はこんなのもう止めにしませんかと言いたかったが、言えなかった。
それを言ってしまえば、父にも迷惑をかけるし、なにより集まってくれた人たちにも迷惑をかけることになる。
「ジャスミン・・・そろそろ再開するぞ。」
程なくして、父は言った。
「・・・はい。」
私は気持ちが込もってない返事を返し、頷いた。